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2009年10月28日

「医療制度の歴史から考える今後の病院経営(医療経営の王道 vol.16)」

医療経営の王道】リアルメディカルの経営改善ニュース vol.16
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━第16号━2009/10/28━━
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■■     医療経営の王道 リアルメディカルニュース
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  発行元:リアルメディカル株式会社
  サイト:>> http://www.realmedical.co.jp/

(1) 医療制度の歴史から考える今後の病院経営
(2) 求められる職種 診療情報管理士編
(3) 病院経営力 養成講座 会計編「決算書の読み方 - 財務3表の見方 編 -」

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(1)医療制度の歴史から考える今後の病院経営
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診療報酬改定を控えて、今後、どのように病院経営を行っていくか、頭を悩ましている経
営者の方も多いはず。

そこで、今回は、医療制度の歴史を振り返り、将来の病院経営のあり方を考えるときに参
考になる情報を提供させていただきます。

日本の医療制度の歴史を振り返ると、大きく2つの時代に分けることができます。

1.医療機関の不足による量的拡大の時代

2.医療費の増加が課題とされる時代

医療機関の不足による量的拡大の時代には、医療インフラを整えることに力が注がれてい
ました。

1958年 国民健康保険法が施行
1961年 国民皆保険が実現
1973年 老人医療費が無料化

今では、考えられませんが老人医療費が無料の時代もありました。さらに一県一医大構想
があり、当時は医療費の増加はあまり気にされていませんでした。

しかし、急速に進む高齢化により、医療費の増加が目立ちはじめました。
財政的に危機感を覚えた政府は、医療費の増加を抑える対策を打ち出しはじめます。

1983年 無料だった老人医療費の有料化
1985年 病床規制の開始
1993年 特定機能病院や療養型病床群を制度化
1997年 サラリーマンの医療費自己負担割合1割から2割へ引き上げ
1998年 地域医療支援病院を創設
2001年 病床区分(一般病床、療養病床)の見直し
2002年 診療報酬で初のマイナス改定(1.3%)
2003年 サラリーマンの医療費自己負担割合2割から3割へ引き上げ

医療費の増加を食い止めようとする中で進んでいったのが、各医療機関の機能分化です。

ある特定の疾患をもった患者さんについて、その疾患の治療を得意とする医療機関がみた
ほうが、治療成果も高く、医療費があまりかからなくなるため、どんどん進められてきま
した。

2006年度の医療法改正では、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)5事業(救急
医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児救急医療を含む小児医療)
について、医療機能を集約化・重点化して、医療提供体制を構築していくことが明示され
ています。

量的な拡大から、質的向上に転換が図られています。

今も、昔も、医療の本質は患者さんを治すことであることに違いはありませんが、より高
い医療技術を持った医療機関が評価され、患者さん(医師も)が集まる環境になりつつあ
ります。

病院経営において、再度、自院の保有する医療資源を棚卸し、今後、力を注ぎ、医療の質
を高めていく範囲を決めていく必要性がでてきています。


文責:木村 晃久
E-mail: kimura@realmedical.co.jp


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(2)求められる職種 診療情報管理士編
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【診療情報管理士の業務と資格】

業務は簡単に説明すると、「医療現場におけるカルテ管理や疾病統計」です。

資格は民間資格であり、社団法人 日本病院会が主催する認定試験(年2回)に合格する
ことで得られます。

〜平成20年度 診療情報管理士認定試験〜
受験者数 3,649名
合格者  1,875名
合格率  51,3%

診療情報管理士認定者数 19,767名(平成20年5月現在)
(社団法人 日本病院会ホームページより)

【今、能力ある診療情報管理士が求められています】

診療情報管理士が必要とされる要因としては

■診療録管理体制加算の算定要件
■カルテ開示の制度化対応
■病院機能評価項目
■DPC導入時の適正なICDコーディング
■EBM(根拠に基づいた医療)に必要な判断材料の元となる診療情報の提供

といったところでしょうか。

診療情報管理士の業務は診療情報を収集、管理するだけではなく、蓄積した診療情報から
必要なデータを抽出・分析し、医療の質の向上および医療経営に活かすことが重要になり
ます。

このため診療情報管理士には診療報酬に関する知識の他、今日の標準的な医療・看護に関
する知識、病床利用率や外来/入院比といった経営管理指標の理解が必要になります。
DPCの適用拡大を見据えた時、計画的かつ合理的な病院経営を行う上で必要不可欠な人材
であると考えられる能力のある診療情報管理士の確保は喫緊の課題と言えます。同時に養
成・育成に力を入れていく必要があります。


文責:行正 政通
E-mail:yukimasa@realmedical.co.jp


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(3)病院経営力 養成講座 会計編「決算書の読み方  - 財務3表の見方 編 - 」
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4回にわたって、会計について連載してきました。

第1回 会計の目的「何のために会計はあるのか?」
第2回 決算書の読み方 -貸借対照表編-
第3回 決算書の読み方 -損益計算書編-
第4回 決算書の読み方 - キャッシュフロー計算書編 -

基本的な財務3表(以下、決算書と書きます)の読み方について、ご説明してきたのです
が、見方がわかったとしても、決算書に掲載されている数字がよいのか悪いのか、慣れな
いとなかなか判断することはできません。

そこで、大切になってくるのが、財務分析です。業界平均の数値や他の病院と比較するこ
とで、自院の強み弱みを判断することができます。


財務分析では、大きく分けて、4つの視点で決算書を分析します。

1.収益性

2.安全性

3.生産性

4.成長性

特に、病院経営を行っていくにあたっては、安全性が重要になります。

また、銀行が融資のときに重視しているのは、収益性と安全性です。従来は経営者の人柄
とかも考慮されていたようですが、債務者区分が厳格化され、ほとんど定性的な考慮は入
っていないそうです。


安全性についてですが、特に重要になるのが、流動比率です。

流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100%

式を見てもわかりにくいと思いますが、1年以内に現金化できる資産を1年以内に返済しな
いといけない負債で割った比率です(第2回の貸借対照表編でも登場してます)。

100%を切っていたら、新たに借入金をしないと倒産してしまう危険性が高いので注意が必
要です。

全国的な医療機関の平均は168%ぐらいで、200%を超えていたら、安全域と言われています。

銀行から借入金を行っている医療機関は多いと思いますが、医業収益の7.7%前後が年間返
済額の目安となります。


収益性については、比較的わかりやすいので説明は不要かと思いますが、総資本経常利益
率、売上高経常利益率などが含まれます。

医療業界では、優良とされる病院であっても、売上高経常利益率は5%前後ぐらいしかない
のが特徴です。


他にも、急性期病院の材料費比率は30%前後だとか、人件費は50%前後だとか、病院の決算
書を見ていけば、大体の目安となる数字がつかめると思います。

同規模ぐらいで目標とする医療機関を探し出し、財務分析の数値の乖離から、改善してい
くべきポイントを見つけ出すことが重要になります。


文責:木村 晃久
E-mail: kimura@realmedical.co.jp

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