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2009年07月03日

シリーズ 公費負担医療制度 〜MSW等との連携〜

 前回は医療事務スタッフが公費負担医療制度に対する知識を深め、率先して患者さんに伝えることの重要性をお話させていただきましたが、医療事務スタッフの説明だけでは広く浅くなりがちで、一般的な質問以外には対応しきれないケースが多くなります。
ほとんどの医療機関では、MSW(医療ソーシャルワーカー)という専門職を配置して医療相談を受ける部署を設けています。しかし、現状としてこのMSWの人員が不足していたり、医療事務スタッフとの連携がうまく取れておらず、結果的に患者さんに十分なサービスが提供されていない医療機関が多いようです。この問題を解決するためには、医療事務スタッフはいち早く公費負担医療制度の該当患者さんを見つけ、MSWに知らせなければなりません。そしてMSWは患者さんに対してより細やかな説明を行い、スムーズな申請をサポートします。このように医療事務スタッフと専門職員との役割を明確にし、連携をはかることが重要になります。
 ここまで一般的な診察時間内のお話をさせていただきましたが、休日や夜間など医療事務スタッフが手薄になる時間帯の患者受入れも発生します。そんなときには医師や看護師の対応が非常に重要になります。特に生活保護受給者などについては、翌日速やかに医療事務スタッフに引き継がれるよう、体制を整えておく必要があります。
 公費負担医療制度の申請が遅れると公費負担の対象とならない治療期間が出てくる場合があることは今回のテーマの冒頭でも述べてきました。つまり、申請に必要な書類を作成するにあたっては、医療事務スタッフによる後追いが非常に重要となります。主治医の意見書等への記載を依頼したままにしないで、すぐに書いてもらえるように医療事務スタッフがフォローできる環境作りが大切です。

患者サービスとして

 公費負担医療制度の申請に関して、医療機関のスタッフが患者さんをフォローすることが患者サービスにもつながります。また一方ではそうすることが、同時に医療機関側の未収金を減らすことにもつながりますので一石二鳥とも言えます。
こうしたよりよい改善へのポイントとして、これまで述べてきたことをおさらいしておくと、下記のようになります。
 @公費負担医療制度についてのチラシや冊子の作成による患者さんへの周知
 A医療事務職員の教育・研修による育成
 BMSW等専門職との役割の明確化と連携
 C時間外対応のルール化(院内スタッフ間での情報共有のあり方)
 公費負担医療制度は、高額な医療費に対する患者さんの経済的負担を減らし、安心して医療を受けてもらうことが目的でありますが、医療機関として大事なことは来院していただく患者さんの目線に立った業務改善を心がけることです。患者さんに親しまれる病院づくりを目指すことが今後は必須課題となってくるはずです。まず一歩目を踏み出してみてはいかがでしょうか。

コンサルティングチーム 大野未来

2009年06月26日

シリーズ 公費負担医療制度 〜誰が患者さんに伝えるのか〜

 前回の「患者と公費負担医療制度」で、医療機関が積極的に患者さんに対して公費負担医療制度についてお伝えすることが、患者さんに好印象を抱かせ、満足度が増し、結果的に患者確保につながることを説明させていただきました。こういった「医療機関の顔」であるとも言える重要な役割を担うポストは一体どこなのでしょうか?
 それは、医療機関を受診した患者さんを最初にお迎えし、最後にお見送りする医療事務スタッフではないかと考えます。なぜなら、医療事務スタッフは受付で最初に患者さんとお話をして、一番早く患者さんの情報を取得することができる一方、最後に会計で料金の計算や、場合によっては支払の相談に乗ることもあります。いかに患者さんに気持ちよく診察してもらい、正しい料金がいただけるかは医療事務スタッフにかかっていると言っても過言ではありません。カルテの病名から公費負担医療制度の該当疾患であることがわかったり、計算してみると医療費が高額になったり、会計の計算時には“気づき”のポイントがたくさんあります。また、前述のとおり会計時には患者さん側から「医療費を支払えない」といった相談を受けることもあるわけですから、最初と最後に患者さんと接する医療事務スタッフは、大変重要なポジションにあるのです。

医療事務スタッフの実情と勉強会の必要性

 ひとことで患者さんに公費負担医療制度について理解していただくと言っても、説明する側に制度に対しての知識がなくてはなりません。また、患者さんから見れば、ベテランも新人も同じ「病院の職員」であるわけですから、どの医療事務スタッフに聞いても説明できるという体制を整えておかなくてはなりません。
 しかし、これまで述べてきましたとおり、公費負担医療制度は法律によって給付の内容や手続きが異なり、大変複雑なしくみになっています。そのため、「担当ではないから」とか「制度によってさまざまでよくわからない」からといった理由で十分勉強できていない医療事務スタッフがいることが実情です。これでは、患者さんに正しく伝え、十分な理解を得ることはできません。
 全ての医療事務スタッフに公費負担医療制度について知識を深めてもらうためには、それぞれの医療機関での勉強会が必要です。まずは医事課長などのリーダーが率先して開催してみてはいかかでしょうか。制度は多岐に渡り、改正も目まぐるしいため、定期的な開催が欠かせません。

コンサルティングチーム 大野未来

2009年06月19日

シリーズ  〜患者と公費負担医療制度〜

 患者さんは公費負担医療制度についてどのくらい知っているのでしょうか?言葉すら知らない人が大半だと思われます。診察を受けた医療機関や市町村から教えてもらうことで、自分の病気は公費負担の対象であることを初めて知るといったケースが多いことでしょう。
 公費負担医療制度は、原則申請して受理された日から公費負担の対象となり、申請前の医療費については公費負担を受けられないので注意しなければなりません。また一方で出生後2週間以内に申請が必要なものもあるなど、多岐に渡って様々な制度があり、受診する患者さんがすべてを網羅するのは不可能です。言い換えれば、患者さんが制度について事前に情報を得て、適正な申請の手続きができるどうかは、診療を受けている医療機関にかかっていると言えるのです。
 公費負担医療制度の意義は、高額な医療費に対する患者さんの負担軽減を目的として、皆さんが安心して医療を受けられるところにあります。医療機関が率先して患者さんに公費負担医療制度の利用を勧めることは、病気に対して不安を抱えている患者さんに少しでも精神面での負担を減らすことにもなりますし、また、医療機関自体の未収金対策にも効果的であることから、担当者がその制度を熟知しておくことは大変重要であると考えます。

患者さんの知りたい情報

 患者さんが知りたいことは、もちろん自分の病気が公費負担に該当するかどうか、あるいは家庭の経済状況による補助制度が受けられるかどうか、といったことでしょう。また、該当することが判明すれば、今度は具体的な手続きをしなければなりません。申請に必要なものとしては、医療機関や医師の記載が必要な書類がありますので、申請用紙や医師の意見書の様式などは事前に準備しておく必要があります。最近では市町村のホームページからダウンロードできるものもありますので、活用するとよいでしょう。一方医療機関側としては、患者さんに対して「申請にはこういったものが必要ですよ」と積極的にお伝えすることが、患者さんへのサービス強化となり、患者数の確保につながっていくのではないでしょうか。それぞれの医療機関でこういった制度についてのチラシや冊子を分かりやすく作成することから始めてみるのも一つの方法です。

コンサルティングチーム 大野未来

2009年06月12日

シリーズ  〜公費負担医療制度とは〜

  高額な医療費に対する患者さんの負担を減らし、安心して医療を受けられるように、社会福祉や公衆衛生の観点から国や地方自治体が医療費の給付を行う制度です。具体的には、生活保護法による医療扶助、障害者自立支援法や母子保健法など社会福祉関係法規による医療給付、感染症予防・医療法(略)や精神保健福祉法(略)などの公衆衛生に関する法律による医療給付があります。
 その他、戦傷病者特別支援法や特定疾患治療研究事業などによる医療給付や、都道府県が独自で設けている制度もあり、ひとことに公費負担といっても、給付の内容は様々で申請手続きも各根拠法によって異なります。

制度を知らせなければ損をさせる


 医療の公費負担に限らず、国や地方自治体が保障してくれる制度は、請求しなければ給付を受けられない仕組みになっています。例えば、所得税の還付。10年以上の住宅ローンを利用しマイホームを新築・購入・増改築した場合に受けられる住宅借入金等特別控除や、医療費を10万円以上もしくは所得金額の5%以上支払ったとき受けられる医療費控除、これは生計をともにする家族であれば合算できます。これらはすべて申告制で、申告しなければ控除を受けることができないので気を付ける必要があります。言い換えれば知らせなければ損をさせることとなってしまう訳ですから、少しでも家計の支出を減らしたいと節約志向が高まるこの時代、いかに制度についての見識を深めるかがポイントです。

コンサルティングチーム 大野未来