ホーム > 医療コラム

2010年01月18日

H.A.C.S 〜自院を知る〜 2

 『敵を知り己を知らば百戦して危うからずや』(孫子)
 前回に引き続き、どれほど“己”を知っているか確認していきましょう。患者層を知ることと同じくらい重要なことは「自院の戦力」を知ることです。戦力というのは『人力・物力・気力』の三つのことです。わかりやすく言うと「人(職員など)・物(設備、備品など)・気持ち(モチベーション、忠誠心)」です。これらの三つの力は知っているだけでは役に立たず、正しく理解している必要があります。つまり職員の顔と名前を把握し、備品台帳を整え、頑張ろうと掛け声をかけているだけではだめなのです。「自院の戦力を知る」=「三つの力を理解する」とはどういうことなのでしょうか。

自院の戦力を理解する


 医療機関の開設あるいは施設基準の届出には、医師・看護師をはじめとする医療従事者について一定数の基準を満たす必要があります。では、ある基準を満たす二つの医療機関がある時、この二つの医療機関の戦力は等しいと言えるでしょうか。表面上(届出上)は同じ基準を取得しているわけですから差はないはずです。しかし実際には届出に関する医療従事者の年齢・経験・勤務形態、医療機関自体の構造や有する設備、職員のモチベーションなど様々な要因によってアウトカム(=収入)には差がつきます。
 このことを「自院の戦力を理解する」に置き換えると、施設基準の届出の状況を知っているだけでは効果的な収入増には結びつかず、相互補完的に三つの力を発揮できるようにマネジメントする必要があるのです。マネジメントするためには理解しておく必要があることは言うまでもありません。
 いくら増収につながる可能性がある施設基準であったとしても、担当する職員の技量・やる気を無視してしまっては、効果は上がりません。むしろ特定の職員に負担がかかるようなことになれば離職に至ることも考えられます。患者様や職員の動線を考慮せず、患者数を増やせばどうなるでしょうか。不要な混雑や長時間にわたる移動を強いることになるかもしれません。
 三つの力は三次元(x軸、y軸、z軸)のベクトルを構成しています。これらの交点が自院の現状、つまりは自院の戦力となります。
 次に三つの力を理解すると何が得られるでしょうか。それは「方向」と「到達点(=量)」、すなわち自院のベクトルです。これは<現状>と<潜在的な能力>あるいは<投資により期待される能力>を比較することで求めることができます。
 まずは「自院の戦力」を理解することから始められてはいかがでしょうか。
.
.


.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.


コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年12月18日

H.A.C.S 〜自院を知る〜

 『敵を知り己を知らば百戦して危うからずや』もっとも有名な孫子の言葉ではないでしょうか。これまで医療機関の広報・マーケティングについて考えてきました。孫子の言う“敵”に対する作戦です。何らかのヒントはあったのではないでしょうか。一方、自院の現状についてはどの程度把握されているでしょうか。職員数や患者数、収入と支出の総額などの基本的なことはともかく、患者層や収入内訳の分析などについてはいかがでしょうか。
 

患者層の分析

患者層を分析することは自院を理解する上で非常に有効です。
  @年齢層別
  A住所別
  B疾患別(診療科別)
  C公費区分別
  Dその他
これらを分析することで自院が提供している・求められてい機能、診療圏・住民構成など患者の分布がわかります。更に他の分析(収益分析、機能分析など)と組み合わせることで、自院の意志決定の際の指標にもなります。レセプトデータと組み合わせて、層別患者単価や診療科別患者単価などは自院の強み・弱みを知る上で参考になるでしょう。
 
 既に分析を行っている場合、更なる視点を模索することも必要かもしれません。一般的に分析等は、定型的な作業になりがちです。初めの内は数値の変化に敏感なのですが、慣れるにつれ鈍感になっていきます。やがてデータを揃えることが目的の流れ作業になってしまいます。定型のデータを取り続けることも重要ですが、時にリフレッシュすることも必要です。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年12月03日

H.A.C.S 〜 マーケティング 〜 3

 前回、マーケティング目標として「アクセスを向上する」ことに触れました。これは言い換えれば、患者さんに「行きやすそうだな」と思わせることでもあります。自院までの地図を載せる場合を考えてみましょう。
ポイントは、
  ・全体的な見やすさ
  ・ランドマーク(目標物)
  ・公共交通機関との位置関係
  ・道路、建物との位置関係
  ・自院施設の配置
  ・駐車場、玄関・時間外入口の位置
などをあげることができます。これらすべてを同時に充たす必要はありませんが、それぞれの視点で見直すことは必要です。忘れられがちなのは「自院施設の配置」と「駐車場、玄関・時間外入口の位置」です。大きな病院であれば棟がいくつかある場合があります。外来はどこなのか、入院はどこなのか迷わないような工夫が必要です。駐車場や入口がわからず、自院のまわりをぐるぐる廻らせるようなことがあってもいけません。“アクセス”とは施設内の目的の場所まで到達することを忘れてはいけません。
 最近ではインターネットの地図サービスを利用している医療機関も見受けられるようになってきました。これならば拡大・縮小も思いのままなので、初めて訪れる際にも助けになるでしょう。一方、地図サービスの画面をそのままコピーした印刷物にも出会います。これらの地図の場合、細かく表示されすぎていてかえって分かりにくくなることがあります。提供する媒体に合わせた地図を考える必要がありそうです。

マーケティングエリアの設定

 患者さんの意識上の距離を縮める「アクセスの向上」ですが、同時に考えておかなければならないことがあります。それは患者さんの居住する地域です。同じ町内に住む患者さんと近隣市町村に住む患者さんを対象にするのとでは採るべき方法が異なります。先の地図を例に考えてみます。
 近隣市町村の患者さんを対象とするのならば、「ランドマーク」、「公共交通機関」などとの位置関係に注意を払う必要があります。ランドマークといっても地元の人しか知らないようなマイナーなものでは困ります。近隣市町村に鳴り響いた、共通認識のあるものでないといけません。自院と道路、駅などとの位置関係にも注意を払いたいものです。東西南北がわかるだけでも見やすさは格段に向上します。駅やバス停からの距離、目安となる移動時間などを付記するとより分かりやすくなるでしょう。
 同じ町内の患者さんではどうでしょうか。すでにおわかりのこととは思いますが、よほど広いか複雑な地形の町内でないかぎり、地図自体が必要ないかもしれません。つまり最適な地図を提供するためにはマーケティングエリアをあらかじめ設定し、必要な情報を洗い出す必要があります。「大は小を兼ねる」という言葉があります。より詳細な情報地図を用意しておけば、遠方にも近所にも対応できると解釈できそうです。しかしながら、詳しすぎる情報は患者さんが理解する上で障害となることがあります。またそんな遠方から来た患者さんが、はたして常連患者さんとなるのでしょうか。
 説明が後先になりますが、マーケティングエリアの設定は広報(案内地図)の対象エリアを決めるというより、自院の診療機能に応じて決めるものなのです。かかりつけ医(家庭医)であれば町内+α、専門科の機能を売りにしているのであれば市町村+α、高度医療を提供しているのであれば都道府県+αなどが目安になるのではないでしょうか。また自院の患者さんの住所地をマッピングすれば、簡単にマーケティングエリアを知ることができます。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年11月06日

H.A.C.S 〜 マーケティング 〜 2

 前回の仮説をもう少し砕いて考えてみることにします。
 「患者さんが医療サービスを購入するのに理解は必ずしも必要ではない。」
例えば突然の腹痛に襲われたとします。
原因は不明で脂汗がたらたらと流れる状況です。
さて、あなたならどんな医療機関を受診しますか?
 ・かかりつけの医療機関
 ・いい評判を聞く医療機関
 ・近くの医療機関
おそらくこの内のどれかでしょう。しかしながら、この3つの医療機関についてどれほど理解していると言えるでしょうか。「近くの」は論外で、早くこの状況をなんとかしてほしいという希望に沿っているだけです。「いい評判を聞く」といっても、あなたが体験したわけではありません。何がいいのか? よく話を聞いてくれる医師がいるのか、処方された薬が良く聞いたのか、すべて他人の体験を元にした評価に過ぎません。
 では「かかりつけ」ではどうでしょうか。あなたが良いと判断(選択)している医療機関であるはずです。ところが今回の腹痛に対しても同様であると言い切れるでしょうか。診るべき疾患・状態が異なるので必ずしも良い結果が得られるとは限りません。つまり過去の成功体験から推測しているにすぎないのです。
 先の仮説を裏付ける事由として「経験がある(通院している)」「噂などの情報」「物理的な距離」を挙げることができそうです。

マーケティング目標

前項から、選ばれる医療機関になるためには「経験(受診)してもらう」「良い評判を立ててもらう」「アクセスを向上する」が必要だということがわかります。それぞれについて対策を考えていきます。

「経験してもらう」
周知の徹底(広報活動)と同時に間口を広げておく必要があります。自院の名称、場所など最低限の情報を徹底的に知らしめる必要があります。またどの診療科にかかればいいのか分からないこともあるため、できるだけ多くの診療科を標榜すること等も手法の一つになります。今の時期であればインフルエンザの予防接種などをアピールすればさらに間口を広げることができるでしょう。

「良い評判を立ててもらう」
いわゆるクチコミです。診療の成果と接遇(傾聴を含む)でほとんどが決まると言ってもいいでしょう。診療の成果については患者さんとの情報の非対称性から理解に乏しいため、第一義的には接遇になります。この場合、挨拶等の接遇に加えて One to Oneマーケティングの要素が多分に入ります。患者さんに接するすべての職員がニーズやニードに対応しなけばなりません。待合でイライラしている患者さんに一声掛けることで、イライラの原因が分かるかもしれません。診察が遅いことに不満を持っているのであれば、順番あるいは受診までの見込み時間をお詫びと共に提供すれば患者さんの不満解消(≒満足)につなげることができます。会話の中で最近聞こえが悪くなったという訴えがあれば、耳鼻咽喉科の受診を勧めることもできるというものです。

「アクセスを向上する」
医療機関を移動するわけにもいきませんし、患者さんに引っ越しをお願いすることもできません。物理的な距離はいかんともしがたいものなのです。しかし意識上の距離は縮めることができます。駐車場の案内を行えば自家用車での来院がよりしやすくなります。また公共交通機関の利用案内により利便性は格段に高まります。医療機関のホームページによっては、この重要性に気付いていないのかと思うものが散見されます。駐車場の場所や最寄りのバス停等が示されてはいるのですが、何も工夫されていません。駐車場があるというので行ってみたらいっぱいで入れなかった、という話も枚挙にいとまがありません。患者さんにとって必要なのは駐車可能な駐車場です。混雑する曜日・時間帯の情報を加えるだけでなく、Twitter 等で随時発信することを考えてもいいのではないでしょうか。またバス停があったとしても3時間に1本しか通らないのでは使えないでしょう。自宅から最も快適に通院することができるルートを提案するという視点に立つことも重要なことなのです。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年10月16日

H.A.C.S 〜 マーケティング 〜

 One to One マーケティングは私たちの身近なところで活用されています。例えば、特定のお店で利用できるポイントカードや旅行代理店から届くツアーのパンフレットなどです。
 ポイントカードといっても、昔ながらのカードにスタンプを押すようなものではありません。レジスターの横にある器械に挿入すると、自動的にポイントが加算されるようなものです。このようなポイントカードの多くは、購入金額に応じたポイントを記憶するといった単純な機能だけではありません。購入した商品名と数量、日時などの情報をシステムサーバーに送るのです。つまりポイントカードを使用するたびに、購入行動に関するデータが蓄積されることになります。集めたデータを解析すれば顧客の嗜好や行動パターン、場合によっては収入や家族構成といったことまで知ることができるのです。
 旅行代理店も同様です。過去の旅行歴を元に顧客の趣味・嗜好に合わせた旅行を提案しているのです。旅行歴が少ない顧客に対しても、あらかじめ旅行者の属性(性別・年齢、職業など)の分析をしておけば、最適な旅行を提案することができます。(注:“最適な旅行”とは成約率が高い意)

情報の非対称性


 患者さんが購入した医療サービスについては、患者さんご本人よりも医療機関の方が詳しいといってもよく、改めてデータを収集する必要はありません。
 一方、医療ではインフォームドコンセント(説明と同意)に基づき、検査等で明らかなあるいは疑われる状態や病状について治療等が行われます。このため一般的な他のサービスとは異なり、表面的には顧客(患者さん)の必要とするサービスは提供されていると言えます。
 これらのことは、医療機関におけるOne to One マーケティング には従来とは異なる考え方とアプローチが必要なことを示唆しています。つまりポイントカードによる購入履歴の管理ではなく(カルテで実施済み)、新たな旅行の提案でもない(インフォームドコンセントで実施済み)ということになります。
 一般的なサービス(商品)では、顧客は商品を理解した上で購入します。逆説的にいうと『理解しないと購入に至らない』です。これに対して医療ではどうでしょうか。医療サービスの知られた特質のひとつに“情報の非対称性”があります。これは医療機関(職員)と患者さんとの知識・情報の格差のことです。患者さんが医療サービスを購入しようとすると医療機関を選ばなければなりません。ところが患者さんは“情報の非対称性”により、理解には程遠いレベルで医療機関を選んでいるのです。
   「患者さんが医療サービスを購入するのに理解は必要ではない」
   「十分に理解していないのに医療サービスを購入する」
患者さんの医療機関受診について、このような仮説が成り立つのです。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年09月28日

H.A.C.S 〜広報機能〜 3

 医療機関の広報には患者さんのニーズに合わせた方法と自院の『売り(特徴)』を売り込む方法があることを前述しました。しかしこれは不特定多数を対象にした広報活動にほかなりません。広報の効果を高めるためには対象と内容を特定していく必要があります。
簡単な式で示すと以下のようになります。


  [ 広報の効果 ]=[ 対象の濃度 ]×[ 内容の濃度 ]

    ※  対象の濃度:内容に対する対象の親和性の高さ
    ※  内容の濃度:対象に対する内容の親和性の高さ

 広報の対象は患者さんですが、患者さんと一口に言うことはできません。年齢・性別、抱える疾患、生活スタイルなど様々です。これらの要素を元にできるだけ細かくグルーピングを行いますが、広報する内容に応じて柔軟に変えていく必要があります。『糖尿病教室の開催』を広報するのであれば、「血糖値が高い」「生活習慣病のリスクが高い」「遺伝的な背景がある」「中高年の男女」などの条件で絞り込むことができます。こうすることによって余計な広報活動を避け、効果を上げることができます。また対象を限定することによって、内容も絞り込むことができます。先の例で言えば『第2回糖尿病教室の開催』に当たって、「第1回への参加者」という条件を付加することによって前回を踏襲したより踏み込んだ内容にすることができます。内容と対象は、一方を絞り込めばもう一方も絞り込めるという相互関係にあります。

One to One マーケティング

 対象を絞り込むためには、患者さんのことをより知る必要があります。
 内容を絞り込むためには、自院のこと、患者さんのニーズを知る必要があります。
すなわち医療機関は患者さんのことをより知るための活動を行わなければなりません。
 日々の診療において患者さんの治療に必要な情報は集められていることでしょう。これに+αとして、グルーピングに役立ちそうな情報や患者さんのニーズを収集・蓄積していくのです。“ One to One マーケティング ”という考え方が役に立ちます。
 One to One マーケティングとは、患者さん一人ひとりと一対一の関係を築くことによって嗜好やニーズを汲み取り、適したサービスを提供していくという手法です。患者さんとより親密になることで、内なる情報・ニーズを引き出すことができます。これにより、広報の内容に親和性の高い対象を選別することができ、また対象に親和性の高い内容を選択することができるようになった結果として、広報効果はより高いものになります。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年09月11日

H.A.C.S 〜広報機能〜 2

 自宅に配達される新聞には多数の広告チラシが入っているものです。チラシを見るのを日課にしている、あるいは見ずに捨ててしまうなど様々でしょう。
 チラシ戦略としては、如何に消費者の興味(≒ニーズ)を惹き付けることができるかがポイントとなります。しかしながら不特定多数を相手にするわけですから、おいそれとはいきません。戦術としては大きく2つが考えられます。ひとつは消費者のニーズに合わせることです。スーパーマーケットを例に考えてみると、クリスマスにはチキンやケーキを、4月初旬にはごちそうメニューやお花見メニューなどがこれにあたります。つまり、時々の消費者ニーズに応じた商品を提案するということです。
 ふたつめは自社商品にこだわることです。不動産や自動車などがこれにあたります。つまり少ないニーズの掘り起こしです。0ではないニーズに対して広く活動する必要があります。効率だけを考えると後者はあまり良いとは言えません。しかし前者に比較して競合が少ないこと、ニーズとの親和性が高いことなど有利な点もあります。

医療機関の広報

 医療機関の場合、広報の方法は医療法により厳しく制限されています。スーパーマーケットや不動産屋さんのように宣伝することはできません。しかしながら、先出の2つの戦術を活かすことはできます。

@患者のニーズ
  →季節性
   夏季のプール熱や冬季の感冒など、季節によって流行する疾患は
   異なります。季節毎に疾患と予防・注意点などを題材に
  →年齢構成
   高齢者の多い地域ならば生活習慣病など、ベッドタウンならば早朝・
   夜間の診療(時間外診療)などを題材に
A自院の商品
  →専門性
   手術や内視鏡の成績・実績、透析治療など
  →医療機器
   CT、MRI、PET-CTなど
  →自由診療
   美容成形、レーシック手術、インプラントなど

 年間の患者層(疾病分布)を分析すること、自院の特徴を見直すことで 2つの戦術を活かす武器が明らかになってきます。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年08月28日

H.A.C.S 〜広報機能〜

 いまや医療機関のほとんどが広報活動に取り組んでいると言っても過言ではありません。普段目にするところでは、交通広告と呼ばれる駅構内や電車への広告があります。この他にもテレビやラジオ、新聞などのメディアを使った広告にも馴染みがあります。これらのように意識しなくても目にする広報(受動的媒体)に加えて、入手しようとする行動が必要な広報(能動的媒体)があります。例えばインターネットのホームページや広報誌などです。またこの他にも講演会の開催や地域イベントへの参加など、行動そのものを媒体とする広報活動も行われています。
 受動的媒体、能動的媒体にはそれぞれ適した対象と内容があります。受動的媒体は広く浅く、一目で分かるようにする方が効果的であり、能動的媒体では興味や知識を満たす(=ニーズに応える)ことに重点を置くべきです。更にはその媒体が見られるシチュエーションを想定するとともに、アピールポイントを絞り込むことが必要です。

広報からマーケティングへ

受動的媒体と能動的媒体の性質を簡単にまとめると次のようになります。

 ●受動的媒体
   対象 ・・・ 病気の有無に関わらない不特定多数。
   内容 ・・・ 名称や特徴などを印象付ける。自院に対してほとんど興味がなく、
          内容を充実すればするほど(面倒なため)敬遠される場合がある。
          できるだけ明瞭簡潔であることが求められる。

 ●能動的媒体
   対象 ・・・ 健康上なんらかの心配ごとがある。または自院に対して興味がある。
   内容 ・・・ 患者さん等の知りたいこと、自院が知らせたいことを重点的に。
          自院の実績、取り組みなどを紹介し、更なる興味・関心を引き出す。
          問合せ先を明記するなど疑問に答え、自院へ誘導する工夫。

能動的媒体には、いくつかの抑えるべきポイントがあります。

  ・自院の何に興味をもっているか?
  ・患者さんの知りたいことは何か?
  ・自院が知らせたいことは何か?

これらのことは、従来の医療機関が行ってきた広報活動ではほとんど知られていませんでした。なぜなら、広報活動=情報発信 であり、情報の双方向性を有していなかったからです。情報発信する以前の患者さんに対するリサーチ、情報発信後のリサーチが十分に行われてはいなかったということです。
 効果的な広報活動を行うためには患者さん(のニーズ)を知る必要があります。ニーズを知るためには従来の広報活動からマーティングへと考え方を脱皮していかなければなりません。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年08月12日

H.A.C.S  〜コールセンター機能〜 3

 コールセンターにはインバウンド(Inbound)とアウトバウンド(Outbound)があることは、以前に説明したとおりです。医療機関では、患者さんからのコール(予約、問合せなど)を受けるインバウンドが中心になります。医療機関から患者さんに営業の電話(アウトバウンド)を掛けることはほとんどありません。せいぜい健診の案内であったり、時候の挨拶ぐらいではないでしょうか。
患者さんにしても医療機関から営業の電話がかかってくれば、嫌な思いをするに違いありません。それでは医療機関にはアウトバウンドは必要ないのでしょうか。

医療機関におけるコールセンターのアウトバウンド


医療機関では、患者さんに対する情報発信として広報活動を行っています。インターネットのホームページをはじめ、病院案内や広報誌を発行している医療機関もあります。またテレビやラジオなどを積極的に活用している例もあります。自院の機能あるいは自院そのものを理解してもらうことを通して、患者獲得に励んでいると言えます。
広報活動の要素として、『対象』『内容』『媒体』をあげることができます。つまり『誰に対して』『どんな内容を』『どのようにして』伝えるかで、効果が全く異なるということです。3つの要素がうまく合わさらないと、良い結果は得られません。このため3つの要素について、事前に調査し、最適化を図る必要があります。


  ●対象・・・患者さんまたは健康な人。年齢、性別、疾患などで区分

  ●内容・・・一般的な話題の提供、自院の専門性の紹介など

  ●媒体・・・メディア(TV、ラジオなど)、ホームページ、広報誌など

コールセンターのアウトバウンドの鍵はここにあると言えます。
つまり、日頃から患者さんからのコール(=接点)をやり取りすることによって、コールセンターと患者さんの間には接点が生じます。場合によっては、「気さく」な間柄となることもあるでしょう。
この接点を活かすことによって、広報活動を支援することができます。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年07月24日

H.A.C.S  〜コールセンター機能〜 2

 これまでは主に顧客(患者さんや家族)との関係から見てきましたが、視点を変えて医療機関に勤務する職員が求めるコールセンターについて考えてみます。新たにコールセンターを設置するのであれば、既存の職員にも何らかのメリット(業務負担の軽減など)があってもおかしくはありません。例えば、専門職種の多くが苦手とする電話対応です。もともと電話対応する機会が少なく訓練が行きとどいているとは言えず、また接遇を意識するあまりしどろもどろになってしまいがちです。よほどの用件でない限り、電話対応を一手に引き受けるコールセンターが助けになり、本来業務に集中できます。また、どの部署につなげばいいのか判断できない(→盥回しにつながる)、理不尽な要求(クレーマーなど)にもコールセンターが対応することができます。
 H.A.C.Sのように情報のコントロールセンターとしての役割を担っていれば、職員のヘルプデスクにもなりえます。

医療機関におけるコールセンター 2


 前回の4つの課題に職員の視点をあわせたものが医療機関に求められるコールセンターと言えそうです。つまりは患者さんや家族の様々な用件に対応し対応できればいいということです。コールセンターがしっかり対応できれば患者さんや家族は満足できるし、その他の医療機関職員が電話対応に追われることはなくなります。なんだか簡単な話ですね。
 それではコールセンターに必要なモノについて考えます。これまで見てきたようにコールセンターの業務は@予約受付、A紹介患者の受入れ、B治療に関する問い合わせ、C制度等に関する問い合わせ、D地域の医療資源に関する問合せ、E自院・医師に関する問い合わせなどに大別できますから、

  ●予約状況を管理するモノ
  ●患者さんの治療の状況がわかるモノ
  ●制度の案内ができるモノ
  ●地域の医療資源をひとまとめにしたモノ
  ●自院と自院の医師の案内ができるモノ

などが必要です。コールセンターは対応速度も求められますので、IT化するなどして効率化を図る必要があるのは言うまでもありません。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年07月10日

H.A.C.S  〜コールセンター機能〜

電話対応をシステム化したものがコールセンターです。一般的には、顧客からの電話を受けるインバウンド(Inbound)と顧客に電話をかけるアウトバウンド(Outbound)があります。予測可能な申し込みや問い合わせに効率良く対応するインバウンド業務とマニュアルに則った作業を繰り返すアウトバウンドと言うことができます。
 コールセンターの設置にあたっては、目的が明確になっていることがほとんどです。例えば通信販売の受注窓口として、メーカーの問合せ対応として、小売店の販売促進(テレコール)などです。これらの業務においては顧客との応答が事前に想定できるため、マニュアル化・システム化といったパターン化が比較的容易と言えます。また、電話対応を集中化(一本化)できることから、顧客にも企業側にも利便性・効率性といったメリットがあり、コールセンターは広く普及しています。

医療機関におけるコールセンター


 外来診療をスムーズに行うために予約制を取り入れている医療機関が増えていますが、これに伴いコールセンターが設置されてきています。インバウンドというわけです。


  予約制 → 増える電話 → さばくためにコールセンター

という図式が成り立ちます。
一見すると効率的に思えるかもしれませんが、はたしてそうでしょうか?

 課題@ 医療機関の電話番号が増える
      慣れていない患者さんには分かりにくい。
      人員(オペレータ)増につながる。

 課題A 診療科が分からない場合
      受診すべき診療科を代表電話に問合せ、その後コールセンターで
      予約をとることになり二度手間になる。

 課題B 用件が予約のみの患者さんにしか対応できない。

 課題C 紹介患者、救急患者に対応できない。

などの課題が考えられるのではないでしょうか。
.
.
コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年06月24日

H.A.C.S  〜接遇のスキル〜

  医療機関における様々なシチュエーションにおいて、基本的な接遇スキルは必ず必要になります。
患者さんや家族を相手にする訳ですから、一般的なサービス業となんら変わりはありません。
むしろ健康(身体的・精神的)を損ねているのですから、“やさしさ”や“包容力”といったプラスアルファが求められます。医師や看護師さんの気遣いの「ひとこと」で救われたという話は、医療現場ではけっして珍しいものではありません。
 電話対応も例外ではなく、基本的な接遇スキル(言葉遣い、所作など)はもちろんのことプラスアルファの対応で好感度アップは間違いないのではないでしょうか。

電話対応のポイント

 電話対応のポイントは接遇だけではありません。
 相手を待たせない“早さ”と適切に受け答えする“正確さ”が重要です。
このふたつは、早く受け答えしようとすると正確さを欠き、正確に受け答えしようとすると早さを欠くという点で相反する要素と言えます。
 医療機関には、薬や制度(介護保険、公費など)に関する問い合わせなど、さまざまな電話がかかってきます。これらに素早く、且つ正確に応えるには幅広い知識と経験が必要になります。
 しかし多くの医療機関では、幅広い知識と経験を有する人材にこういった電話がつながっていないようです。それは「長時間保留にされた」「盥回しにされた」「明確に答えてもらえなかった」という患者さんからの苦情が物語っています。

コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年06月15日

H.A.C.S  〜もうひとつのポイント〜

前回までに患者獲得のためポイント「患者獲得のルート」「患者獲得の取り組み」について説明してきましたが、次のポイントは「患者獲得の窓口」です。医療機関と患者さんのつながり(接点)ということができます。患者さんが来院すれば受付(総合案内、外来受付など)が窓口になります。受付の対応如何で印象・評価が大きく異なることから、マニュアル化や接遇の向上に取り組んでいる医療機関は増加の一途をたどっています。最近では医療コンシェルジュと呼ばれる専任のサービススタッフを配置している医療機関もみられるようになってきました。
 来院者の窓口が受付であるのに対して、もうひとつ窓口があります。それは電話(代表電話、予約電話など)です。

電話対応窓口では

医療機関には、診察時間の問い合わせや入院患者さんへの取り次ぎなど、様々な電話がかかってきます。
  ・急を要する内容
  ・治療内容や薬に関する内容
  ・入院患者さんの個人情報に関わる問合せ
  ・苦情
  ・伝えたいことをうまく表現できない方から
  ・医師等へのセールス    など
 これらを上手に捌くことが電話対応窓口には求められますが、実際にはうまくいっていないケースが多いようです。急病人を目の当たりにした家族が、うまく状況を説明できないことは十分に予想できますが、杓子定規な対応をしてしまった。担当者に代わったつもりが、間違っていた。苦情の電話がさらに、電話対応についての苦情になってしまったという話は枚挙にいとまがありません。受付窓口と同様に“サービス”について見直す必要があります。


コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年06月03日

H.A.C.S  〜患者獲得のルート〜

前回の「患者獲得とは」で少し触れましたが、患者さんが医療機関を受診するには3つのルートしかありません。すなわち “外来” “紹介” “救急” です。患者獲得に取り組むに当たっては、自院の医療機能・役割、医師数などの診療体制、今後の方向性を総合的に把握することができれば自ずから取り組むルートが決まってきます。自院の特徴を活かすことを考えるだけでもいいかもしれません。
 ルートは決まりました。次にはどんな取り組みをすればいいでしょうか。患者獲得の取り組みにはふたつあり、それらは表裏一体の関係になっています。裏と表がうまく噛み合わないと意図するような効果は得られません。

患者獲得の取り組み −表と裏−


 まずは表から。これはいわゆる“口コミ”であり、ソフトの部分です。「接遇を向上する」、「ていねいに説明する」といった患者満足の考え方によるものです。今ある資源と環境を有効に活用することによって、質の向上をはかります。この取り組みがうまくいくと、PDCAサイクルあるいはバリューサイクルと称される好循環が生まれ、患者さんの為だけでなく職員のモチベーションアップにもつながります。
 次に裏です。表がソフトであれば、裏はハードということになります。体制を見直すことによって、患者さんが受診しやすくすることです。例えば、“外来”では、「日曜外来」「夜間外来」「外来ブース(診察室)の増設」などです。患者さんを受け入れる“間口”を広げるイメージです。“口コミ”で獲得した患者さんを受け入れる体制づくりは、欠かすことができません。

コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年05月25日

H.A.C.S  〜患者獲得とは〜

 H.A.C.Sは患者獲得の為のシステムですが、一般的な医療機関における患者獲得とは外来患者数増をさします。この中には救急や健診なども含めます。また紹介・逆紹介患者も含めます。外来患者数の増加には二つの要因があります。ひとつめは新規の患者が増えることであり、多くの医療機関でも月ごとあるいは日ごとにモニターされています。ふたつめは再来患者が増えることですが、あまり現実的とは言えません。1週間に1回だった外来受診を2回に増やすということですから。むしろ医療の進歩や投薬期間の延長で外来受診の回数は減る傾向にあります。

新規患者獲得のために


 ぜひとも獲得したい新規患者ですが、どのようなアプローチをすればいいのでしょうか? 新規患者と一口に言っても『まだ見ぬ患者さん』ですから、健康な人から今まさに体調不良の人までさまざまです。
ひとつとして、消費者心理のプロセス・モデルであるAIDMAの法則が有効です。
   Attention(注意)・・・(貴院を)知らない状態
   Interest(興味、関心)・・・(貴院に)興味がない状態
   Desire(欲求)・・・(貴院に)かかろうと思わない状態
   Memory(記憶)・・・病気なのに(貴院に)かからない状態
   Action(行動)・・・(貴院に)かかろうとしている状態
   (上記の頭文字でAIDMA
 それぞれの状態(ステージ)に合わせたアプローチをかければ、次のステージに移行し、やがて新規患者となります。新規患者の獲得には順序があり、初めから治療が必要な人だけを獲得しようとしても無理があります。

コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年05月14日

H.A.C.Sの前に・・・

H.A.C.Sが“情報管理”“コールセンター”“広報”からなる患者獲得のためのシステムであることは前回のとおりですが、各機能について見ていく前に「患者獲得」とはどういうことか考えてみましょう。
医療機関の収入のほとんどは医業収入であり、診療報酬です。患者さんを診察、治療などすることにより診療報酬は発生しますから、単純には収入を増やすためには患者さんを増やせばいいとなります。もう少し踏み込んでみると 収入=単価×患者数 ですから、単価を上げても収入は増えます。各医療機関でも看護体制の見直しなどで、単価を上げることを検討されているのではないでしょうか?

質と量 どちらを優先?

単価アップと患者数アップではどちらを優先して取り組むべきでしょうか? アップ質(単価)と量(患者数)ですからどちらも同様に重要ですので、どちらからでないといけないという法則はありません。自院の状態を分析し、優先順位の高い方から取り組めばいいのです。
指標としては他院とのベンチマークテストが分かりやすいのではないでしょうか。また判断の方法としては、収入を●●%上げるためにはどちらが簡単かということがあります。収入は単価×患者数ですから、収入を10%上げるにはどちらか一方を10%上げればいいのです。ベッドが空いていれば“量”をアップ、適正な医療の提供で“質”をアップできます。レセプト診断などを利用すれば、上げるべき“質”を読み取ることもできます。どちらを優先するかは各医療機関によってさまざまなのです。


コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2009年04月30日

患者獲得に向けたH.A.C.S(Hospital All Connected System)

自治体病院の71%、民間病院の32%が赤字経営といわれる昨今、医療機関の健全経営のための取り組みがクローズアップされています。なかでも医療収入改善の最短距離である患者数を増やすためのシステムツールに注目が集まっています。

Hospital All Connected System(H.A.C.S)は、紹介患者数増と外来患者数増を目的として考えだされました。そのコンセプトは、自院内外のヒト・モノとの関係を強固にし、信頼関係を作り上げること。なかでもコールセンターの組織上の位置づけや機能を明確に定義していることが特徴的です。従来の医療機関のコールセンターとは全く異なり、「患者獲得」にむけた活動を展開します。

H.A.C.S(Hospital All Connected System)

H.A.C.Sは、3つの機能の集合体といえます。“情報管理” “コールセンター” “広報”です。あまり真新しさはありませんが、これらの機能を有機的に組み合わせることで効果を発揮します。例えば“情報管理”と“コールセンター”を組み合わせることでCRM(Customer Relationship Management)を、“情報管理”と“広報”を組み合わせることでAISAS理論の実践などです。
患者獲得のアクションは全周囲的なチャネルに対して行う必要があります。健康な赤ちゃんから病気の高齢者までさまざまで、漠然とした活動では思うような成果は得られません。絞り込んだ対象者に適切な内容で対応する必要があります。


コンサルティングチーム主任研究員 都司博直

2008年01月10日

医療経営の本質を追求するTCCT(Total Care Coordinate Team)

急速な高齢化の進展に伴う老齢化人口の増加、慢性疾患の増大等の疾病構造の変化、医療技術の高度化、専門化に伴い、医療需要がますます多様化するとともに、国民の健康に対する関心の高まりに応えられる、医療サービス提供側の役割と本来の医療サービスのあり方が問われています。

少子高齢社会への進展を背景に、国はこれまで本質的な医療提供のあり方を検討するより、医療経済面、特に国民医療費の抑制を国家的課題としてクローズアップしてきました。

生活習慣病といわれる高血圧症や糖尿病などは長期にわたる治療が必要で医療費高騰の一因と考えられますが、こうした生活習慣病は、治療における徹底した経過管理観察と正しい日常生活を送ることで改善予防できるものと考えられます。本来医療サービスの質を語るのであれば徹底した患者病態の観察・管理による評価が重要となります。

すべての国民の健康増進、疾病予防および生活の安全確保など、国民の健康に重要な取組が何かを見極める必要があり、プロである医療従事者の力量資源を有効かつ最大に投下発揮できる環境を整備することが本来の最大の課題と思われます。

このことを達成するための手法として、TCCT(Total Care Coordinate Team)の取組があり、健康・治療・予防を患者(国民)個々へのプログラミングし、その必要度に応じた資源の配分管理と経過観察管理をすることが、医療・介護提供側のあるべき姿と考えられます。

TCCT(Total Care Coordinate Team)とは

食事栄養管理・免疫力の向上・口腔ケアー・皮膚ケアー・地域連携・診療管理コーディネイト・在宅訪問看護・在宅訪問ヘルパー・在宅配食サービス・ターミナルケアー・リハビリ・薬剤管理・患者個々のデイスケジュール管理・住環境管理等、徹底したサービス提供の構築とケアーの組立を行うことを目標とした考え方で、技術力・気付き力(観察力)・理屈の理解力等を向上させる手法と考えます。個々の患者に対し、上記の内容について状態把握を行い、その必要度に応じた資源配分を行うことをあらゆる専門分野のスタッフが総合的な目で捉え、徹底した管理体制を構築します。